最初の職場として、大手を選ぶ薬剤師は少なくありません。
調剤薬局も倒産すると言われている時代ですし、大手は安心感がありますよね。
設備やシステムも整っており、福利厚生も充実。
大手調剤薬局はとても働きやすい環境に思えますが、実は大手入社後2~3年すると「辞めたい」と考える人も多いんです…。
大手チェーンに勤めていて、辞めたいな…と感じている方にお伝えしたいことを、転職エージェントとして多くの薬剤師さんの転職をお手伝いしてきた筆者の経験を元にまとめました!
大手就職者が実際にどんな時に辞めたいと感じるのか、大手は辞めても大丈夫なのか、大手からの転職先はどんなところを選ぶのが良いのかなどをお伝えしますよ。
目次
大手を辞めたいと思うのはどんなとき?
せっかく大手に就職したのに、辞めたいと感じるのはどうしてでしょうか。
実際に大手を「辞めたい」と思ったことがある薬剤師の方に、どんな瞬間に辞めたいと感じたのか聞いてみました。
周りより給与が低いことに気が付いた
薬剤師3年目のとき、大学の友人と年収を教えあったら、自分が一番低かった。
後で調べたら友だちが勤めている中小はこれからもっと年収が上がるみたいで、ここで仕事を続ける意味って何だろうと思ってしまった。
友人は来年には管理薬剤師にしてもらえるようだったが、大手だとポジションがつくのはまだ先なので、早めに転職した方が良いかと考え始めた。
20代 男性 奈良県
一般的に大手と言われる調剤薬局よりも、中小規模の調剤薬局の方が、平均年収が高め。
地方ではあまり差が出ませんが、都市部だと20代でも年収に100万円以上差が出ることもあります。
今の給与のままで家庭を支えることに不安
結婚を考えている彼女がいますが、今の会社の給与だと家庭を支えていくのには不安があります。
彼女は薬剤師ではないので、一度出産で仕事を離れると復職が難しいようです。
自分の給与だけで子どもを育てることを考えると、今の会社では難しいかもしれないと考えました。
30代 男性 石川県
他の職種に比べ、早いうちに給与が頭打ちになる薬剤師。
結婚や奥様の妊娠を機に、1馬力でも家計を支えられる中小企業に転職をする男性薬剤師も少なくありません。
サービス残業が続いた
入社前は残業代は全部支払いますって言われていたのに、研修後に配属になった店舗では残業代がほとんど出なかった。
薬局長に残業代はどうして出ないのか聞いたら「決められた時間内に仕事が終わらないのは、個人の能力が低いから」と言われた。
実際には薬局全員がサービス残業をしていたので能力の問題ではなく、残業をつける気がないとわかって辞めようと思いました…。
20代 女性 広島県
残業など時間外労働を行った場合、その分の割増賃金を支払わないことは、労働基準法違反に該当します。
そのため残業をした事実を残さないために、シフトを調整したり、残業前にタイムカードを押させる企業もあります。
残念なことにそういった残業代の未払いは、大手チェーンに多い傾向です。
ルールが厳しすぎて、患者さんにきちんと対応できない
薬に対する不安が大きい患者さんに色々と質問を受けたのですが、薬局内が混雑していて、それ以上長くお話するのは難しい状況でした。
そこで薬局内が落ち着いてから、後で患者さんのお宅にこちらからお電話して、続きの質問に回答させて欲しいとお話しました。
患者さんもその方がゆっくり話せて助かるとおっしゃっていたのですが、薬局長に「そういった対応はマニュアルにないのでやめるように」と言われました。
電話がダメな理由が「マニュアルに載っていない」だけだったので、納得できず理不尽な思いをしました。
20代 女性 栃木県
薬局長の性格や判断による部分も大きいですが、基本的に大手は業務に対するマニュアルがかなり細かく決まっています。
仕事をする上で一定の決まりは必要ですが、理不尽なルールを押し付けられて、ベストな選択ができないと感じる薬剤師の方も多いです。
異動・転勤が多くて大変
異動や転勤はあるけど多くはないと聞いていたんですが、実際にはかなり多いです。
半年間地方店舗に応援に行かされたあとに、元の店舗に戻らず飛行機の距離に転勤になりました。
来年にはまた別のエリアに転勤と言われており、慣れない土地ばかりで毎日疲れています…。
20代 男性 埼玉県
多くの調剤薬局に異動がありますが、あまりにも頻繁に異動があったり、転勤があると仕事への疲労が大きくなります。
大手を辞めて転居がない企業で働きたいと考える人も、少なくありません。
実際に大手を辞めた薬剤師の転職理由を、10社紹介
アインフォールディングスや日本調剤など、実際に大手を辞めた薬剤師は、どんな理由で転職したのでしょうか。
私が転職エージェントとして出会った薬剤師さんの、主な転職動機をご紹介します。
アインフォールディングスを辞めた理由:給与面での不満
画像出典:アイン薬局
大手の中でも「年功序列」が厳しい企業です。
年収の上り幅が低く、結婚や本人や奥様の出産を機に、30歳前後で「給料面での不満」を理由に転職する人が多いですね。
勤続年数が増えると、役職は必ずあがりますが、出張が多くなります。
出張や管理職の残業も、転職理由として挙げられることがあります。
クオールホールディングスを辞めた理由:体力的な負担
画像出典:クオール薬局
薬剤師1人当たりの業務量が多く、残業も他企業と比較すると多い特徴があります。
業務をこなせず「体力的な負担」を理由に転職をされる薬剤師が多い印象です。
年収もそれほど高くなく、「給与面での不満」も退職理由として挙げられます。
店舗によっては、残業代が出ていないところもあるようです。
日本調剤を辞めた理由:キャリアアップ目的
画像出典:日本調剤
薬剤師としてのキャリア教育が、非常に厳しい企業です。
新卒から3年間を一つの枠として捉えているので、入社1~2年での転職者はほぼ見ません。
ひと段落した3年後に、「キャリアアップの為に」転職する薬剤師が多い印象です。
企業母体は調剤業務以外にも幅広く手がけており、昔の評判に比べると無理な部署変更もなく、業務量も少ないと聞きます。
メンター制度を導入し、新卒薬剤師と2年目薬剤師をペアにすることで、新卒の定着率が上がったようです。
アイセイ薬局を辞めた理由:体力的な負担
画像出典:アイセイ薬局
新卒者でも3ヶ月をめどに(店舗・エリアによっては入社初日から)、1人としてカウントされ、即戦力としての勤務が求められます。
店舗スタッフも必要最小限で構成されており、残業時間、夜診帯の勤務が比較的多くなりがち。
そのため「体力的な負担」を理由に、転職をされる方が多いです。
ほか店舗異動が多いのも特徴で、若い時から異動を経験しますが、店舗環境に慣れることができず「人間関係」を理由に退職する人もいるようでした。
ただ、雰囲気の良い店舗が多く、働きやすいという声もよく聞きます。
ファーマライズホールディングスを辞めた理由:業務内容への不満
画像出典:ファーマライズホールディングス
多数の法人が集まり、グループ企業として大規模になっている企業です。
法人自体が残っているので、法人色にプラスする形で、企業風土をつくっています。
アットフォームな雰囲気に惹かれ、新卒の定着率は高いイメージですが、ベテラン薬剤師が多いことによる人間関係トラブルもまれに見られます。
業務内容が各法人の昔のやり方に沿ったままのものが多く、「業務内容に不満をもって」転職を検討される方もいるようです。
阪神調剤薬局を辞めた理由:一部店舗のブラック要素
画像出典:阪神調剤薬局
元々は関西圏での展開がメインでしたが、全国規模に急成長した企業です。
メインとなる関西圏の店舗は、会社方針がきちんと伝達されている店舗が多いです。
一方、関西圏外では各エリアや各店舗で運営している部分が多く、各上層部の考え方によっては、プラック要素が多々あると聞いたことがあります。
サービス残業や労働環境の劣悪化、本社との風通しがまだ不明瞭な部分があり、封鎖的な環境であることも一因だと思います。
サービス残業など『ブラック要素』がある店舗に当たってしまい、転職を希望される方が多いです。
クラフトを辞めた理由:体力的な負担
画像出典:クラフト
さくら薬局という名称で有名な企業です。
M&A買収を積極的に行い、全国展開をおこなっています。
人材補充と店舗展開のスピード感の足並みが揃っておらず、常に人材不足が露呈している状況です。
結果的に残業時間の多さや遅番シフトの回数増など『体力的な負担』を理由に、転職を希望される方が多いです。
ベガファーマを辞めた理由:人間関係
画像出典:ベガファーマ
大阪府南部を中心に展開しています。
東邦ホールディングスに加入しましたが、企業単体は存続しています。
企業自体が薬剤師が少ない地域に展開をしており、正社員の数が少なく、パートの数が多い特徴があります。
結果、勤続年数が長いスタッフが多く、ベテラン層が多い企業です。
そのため『人間関係』のトラブルが原因となり、入社数カ月での転職をする若手薬剤師もいます。
総合メディカルを辞めた理由:異動の多さ
画像出典:総合メディカル
九州に本社があり、九州地方と他エリアでは方針や人員バランスにバラツキがあります。
新卒者は必ず九州での研修があります。
男性の場合は最初の配属先がそのまま九州となり、数年後に希望エリア(関東・関西)という流れが多いです。
調剤業務以外の部署が多く、配属先の転勤などが盛んです。
きちんと転勤に伴う手当はでますが、家族がいる方などで『異動の多さ』が負担となり、転職を希望されると聞きます。
スギ薬局を辞めた理由:体力的な負担
画像出典:スギ薬局
東海地方を中心に全国展開されている企業です。
全国規模のドラッグストアで社内規定がシッカリしているので、どこに転勤になっても基本の業務内容は同じです。
独自の店舗管理方法を行なっており、リスク管理などはトップクラスの水準を誇っています。
一方、業務内容の厳しさや店舗運営時間の長期化などで、『体力的な負担』があり転職を決められる方が多い印象です。
大手10社の退職理由としてよく見られるものは、このようなものでした。
もちろんここで紹介した理由に当てはまらない退職者もいますが、大手を辞める理由には大まかな傾向があるので以下でまとめます。
大手調剤チェーンの2大退職理由
大手チェーンを辞める理由として、多く見られるものは以下の2つです。
- 給与面での不満
- 体力的な負担
初任給は中小と比べて低くはない企業もありますが、大手チェーン全体には年収が上がりにくいというデメリットがあります。
そのため数年勤務後に、将来的な収入を見通して、転職を考える方が多いようです。
また大手では利益追求のため、必要最低限の薬剤師配置を行ったり、店舗数の増加に薬剤師の確保が間に合っていないことがよく見られます。
それにより薬剤師個々に対する、体力的な負担が大きくなり、転職に繋がっていると考えられます。
年収は高いけど残業が多いという薬局も、正直なところ大手に多い傾向です。
残業が多くなれば当然残業代も増えるので年収は高くなりますが、その分体力と精神力は日々削られていきます。
20代のうちは限界まで働いても大丈夫という人は多いですが、30代になると急激に疲労が溜まるもの。
職場や働き方を選べば『残業を少なく年収を高く』という希望も、叶えられる可能性があるんですよ。
例えば残業を少なく年収を高く維持する方法には、以下のようなものがあります。
残業を少なく年収を高く維持する方法
- 残業が少ないドラッグストアで働く
- 給与交渉可能な職場に転職する
- 夜の遅い時間帯に働く
- スキルや資格を身に着ける
- 福利厚生が自身の状況にあった企業を選ぶ
具体的な『残業が少ないけど給料が高い会社』を知りたい方は、「薬剤師が残業を減らして年収を下げない転職の方法」もチェックしてみてくださいね。
一部残業代をしっかり払っていない大手もあるようですが、残業代の不払いは労働基準法違反。
労働基準監督署に通報するか、転職しましょう。
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※マイナビ薬剤師の詳細は「マイナビ薬剤師の評判・特徴を転職エージェント2人が赤裸々に暴露!」の記事で解説しています。
大手を辞める薬剤師はどんな人が多いの?
大手調剤で「辞めたい」と考えるのは、新卒の勤続2、3年目の薬剤師に多い傾向です。
その中で実際に転職まで進むのは、一般的にこちら。
- 新卒薬剤師
- 勤続4~5年目
中途薬剤師からも大手を辞めたい人は出ますが、新卒に比べると少ないです。
中小薬局が合わずに大手に転職した経験などがあり、大きな不満なく働けている人が多いのが理由です。
勤続4~5年目は仕事に一通り慣れて、職場のイヤなところが目につきやすい頃。
2~3年目ごろから抱えていた不満が、そのころになって爆発するのかもしれないですね。
我慢していたけど、結婚などライフスタイルの変化を機に、転職を決意する人も多いです。
調剤大手の日本調剤の平均勤続年数は5.8年です。〔※〕
教育体制が整っている大手でも、やはりそれくらいで辞めてしまう人が多いんですね。
他社大手の平均勤続年数も4~6年が多い傾向です。
辞めたいと考えてから実際に辞めるまでに、どんな悩みや葛藤があるのか、次の項目でお話していきます。
〔※〕出典:exiteニュース 調剤薬局を全国展開する、日本調剤の給料はどのくらいか
大手を辞めようかどうか迷う薬剤師の悩み・葛藤には何があるのか
職場を「辞めたい」と感じたときに、すぐに退職、転職と行動する方はあまりいません。
ほとんどの方は、「本当に辞めていいかな」「辞めたら後悔するかな」と、悩むもの。
大手を辞めたいと迷っている薬剤師が、抱えがちな悩みや葛藤を、質問形式でご紹介していきます。
Q.新卒2~3年で辞めても大丈夫?
A.明確な転職理由があれば大丈夫。
「残業や異動などが、就職前に聞いていた話と違った。」
「人間関係のトラブルがあった。」
「(転職先で)〇〇分野の勉強がしたい」
このような明確な理由があれば、新卒2~3年で転職して問題ありません。
大事なのはその後も転職を繰り返さないように、今持っている不満を解消できる転職先を見つけることです。
Q.中小の方が給料はいいらしいけど、中小って将来性は心配ないの?
A.中小調剤に転職するなら、将来性の見極めは必要。
今やコンビニよりも多いと言われる、調剤薬局。
高齢化社会のため安定と思われがちな業種ですが、調剤報酬改定や調剤薬局の乱立などにより、倒産する中小調剤も珍しくはありません。
平均年収は大手よりも良いですが、倒産しては意味がないですよね。
社歴や経営状況・企業としての成長度合いや現在の店舗の立地状況などを考慮して、安定していそうな中小を選びたいもの。
判断が難しいところでもあるので、転職エージェントにアドバイスを求めても良いでしょう。
1つの判断基準として、「マイナビ薬剤師など紹介料が高い転職サイトを使っている企業は、経営基盤が安定している」と言えます。
マイナビ薬剤師は掲載希望があってもブラック要素や不安要素がある求人は紹介しないので、安心して働ける中規模調剤を選びたいならマイナビ薬剤師に相談してみるといいですよ。
参考記事 マイナビ薬剤師の評判・特徴を転職エージェント2人が赤裸々に暴露!
Q.福利厚生や退職金は大手の方がいい?
A.一般的には大手の方が良いけど、年収の差も含めて考慮して。
家賃補助や提携企業の割引、保養所の利用などの福利厚生は、圧倒的に大手の方が充実しています。
実は退職金は、労働基準法において、必ず支払わなくてはならないわけではありません。
中小調剤では、退職金制度がない場合もあります。
退職金を重要と考える方も多いですが、年収の差が大きければ退職金がなくても、最終的に手元に残るお金が多くなる場合も。
特に女性は結婚してパートや派遣に変えることもあるので、退職金の有無ではなく年収を優先させた方が得な場合も多いですよ。
私が出会ってきた薬剤師さんの中で、大手から中小に転職したことで後悔している方はいませんでした。
もちろん職場選びは大切ですが、大手を離れるデメリットはそれほど気にしなくても問題ないですよ。
参考記事 転職エージェントが選ぶ、転職サイトランキングはこちら
大手出身者は転職で有利。年収大幅アップも可能?
大手チェーンを経験した薬剤師は、転職市場で価値が高いって知っていますか?
大手出身者の評価が高い理由は、主に以下のとおりです。
大手出身者は転職で有利な理由
- 大手のノウハウを学んでいるから
- しっかりとした研修を受けていて、知識が豊富だから
- 仕事に対する意欲が高い人が多いから
大手薬局は中小薬局に比べて、マニュアルなどソフト面・調剤システムや分包機などハード面の双方が充実しています。
効率的な仕事の仕方や器機の操作などは、一般的に大手出身者の方が知識・経験が豊富です。
大手は研修にかける時間や費用もあるので、新卒ならしっかりと研修を受けていて基礎ができていることも、研修がしにくい中小にとって魅力的。
また大手から中小に転職しようと考えるということは、大手ではできない経験・勉強をしたいと考えたり、年収をアップさせたいという向上心がある人ばかりです。
大手出身者は知識・経験・向上心が高いことから、大手出身者は薬剤師の転職市場において、高く評価されるんです。
そのため転職エージェントの交渉によっては、求人票よりも良い条件で転職できることもあります。
大手でキャリアを積んだ30~40代なら、中小企業の即戦力・管理職候補として入社することで、大幅な年収アップも狙える可能性があります。
別の記事で男性転職エージェントさんが、このようにお話しています。
「早く成長したい」「年収を上げていきたい」という方は、そうではない方よりも積極的に転職したり、職場や環境を変えようとする傾向があります。
薬剤師以外の職業でも同じことが言えますが、チャレンジする人は結果的に高い年収を得たり、上のポジションになることが多いです。
同じ会社で長く働く人がダメなわけではないですが、多くの事例やノウハウ・成果の出し方を知っている人は、上のポジションに指名されやすいですし結果も残しやすい傾向です。
全体で見ると、転職を数回して最後に落ち着いた企業でハイクラスポジションになり、年収800万円を叶えている方のほうが多いです。
大手調剤チェーンに就職して後悔している方も、その経験が今後の転職で有利に働くと思ったら、前向きな気持ちになれますね。
\年収アップに強い転職サイトはこちら/
ファルマスタッフに無料登録する
※ファルマスタッフの詳細は「ファルマスタッフの評判・特徴を転職エージェント2人が赤裸々に暴露!」の記事で解説しています。
大手出身者にオススメの転職先
私が出会ってきた薬剤師さんで、大手を辞めたことで後悔している人はいません。
ただ「転職先が合わなかった」ことで、後悔している人は残念ながらいます。
大手を辞めて転職する薬剤師に、オススメの転職先の探し方をお伝えします。
大手出身者はどんなところに転職している?
すでにお話した通り、大手を辞める理由の上位は、「年収面」「体力的な負担」でした。
年収面と体力的な負担どちらかというより、両方が転職理由となっている場合も多いですね。
その2つの不満を解消しやすいのは、中規模チェーン薬局であり、多くの大手転職者が中規模薬局を選びます。
その理由はこちら。
- 大手に比べ年収設定が高めで、交渉も可能だから
- 無理な事業拡大をしていないので、薬剤師数に余裕があるから
1店舗もしくは数店の小規模薬局でも上記に当てはまる企業はありますが、大手経験者は「小規模すぎるのも不安」と感じる方が多く、中規模を選ぶ方が多い傾向です。
そのため大手出身者は、県内もしくは周辺県に出店している、中規模のチェーン薬局を選ぶ方が多いです。
大手出身者にオススメの職場は?
一概に「大手出身者はここに転職すると良い」とは言い切れず、大切なのは退職の決め手となった不満を解消できる職場を見つけること。
いくつか希望を出して優先順位をつけると、希望に合った職場を見つけやすくなります。
大手出身者の転職でありがちな失敗は、高年収につられて最初の希望と違う職場に決めてしまうこと。
余裕を持って働ける職場を希望していたのに、予想よりも高い年収を提示されて、残業ばかりの店舗に入ってしまうなどです。
高年収をエサに、激務の店舗に大手出身者を管理職候補として呼ぼうとする中小薬局は、珍しくありません。
体力的な負担が原因で転職したのに忙しい職場に入ってしまうと、結局不満が解消されず転職を繰り返すことに。
退職の決め手となった不満点については、妥協せずに転職先を探すことが、大手出身者の転職を成功させるコツと言えます。
薬剤師が転職を成功させるコツを知りたい方はこちらの記事をご覧くださいね。
転職エージェントを有効利用して転職を成功させるコツもまとめてありますよ。
大手を辞めて中小薬局に転職した薬剤師の体験談
大手を辞めたいと考えている薬剤師さんにとって、「実際いい職場は見つかるの?」「本当に大手での不満を解消できるの?」と気になることはたくさんあると思います。
そこで私が転職エージェントとして実際に知り合った薬剤師さんの、大手企業から中小調剤薬局へ転職した体験談をお伝えします。
併せてこのサイトに関わっているエージェントや知人エージェントからも転職体験談を教えてもらったので、合計3名分のアイン薬局・クオール薬局・スギ薬局を退職体験談をご紹介しますね。
アイン薬局から中規模調剤に転職したAさん
働き初めの数年は気にならなかったんですが、年収がなかなか上がらず不満がありました。
役職がつけば手当がつくんですが、自分よりも年上の薬剤師が多くまだしばらく薬局長にはなれそうになかったんですよね。
付き合っている彼女と来年には結婚したいと考えていたので、それまでに年収が高いところに転職しようと決意しました。
転職サイトで相談したり求人を比較して、近隣30店舗程度の中規模薬局に決めました。
研修が少なく土日はちゃんと休めるし残業もほぼないのに、年収は420万円→510万円へアップで大満足です!
大手での経験が評価されて管理薬剤師候補として入職できたので、今までよりやりがいもできました。
アインは長く勤めれば最終的には年収はそれなりになるらしいですが、若いうちから高年収が欲しい人は中小の方がいいかもしれないですね。
20代 男性 北海道
クオール薬局から地域密着薬局に転職したBさん
クオールは入社時に転勤の希望について選択できます。
全国転勤ありのコース・特定エリアでの転勤ありコース・転勤なしコースから自由に選べるんですが…正直転勤なしコースは給与が低すぎて選べませんでした。
多少の転勤ならいいかと思ったんですが、予想以上に転勤や異動が多く3年で疲れてしまいました…。
もっと落ち着いて患者さんと身近に関わりたいと考え、地域密着の薬局求人を探しました。
転職サイトで希望を伝えたところ、社長が薬剤師の中規模薬局を勧められたんですよね。
そこは「異動をできるだけ少なくして患者さんとの関係を重視する」という方針で私の希望通りだったし、見学したところ店舗の雰囲気もよかったのでそこに決めました。
前よりも患者さんとしっかり話せるようになり、私のことを覚えてくれている患者さんも増えました。
転勤・異動なしで腰を据えて働けるのに年収は変わらずで、前より良い環境で働けています。
20代 女性 千葉県
スギ薬局から中規模調剤に転職したCさん
私がスギ薬局を辞めたいと思ったのは、忙しすぎて体力的にも精神的にも限界だったからです。
同期に一度相談したところ「残業もほとんどないし、何がそんなに大変なの?」と言われて、ガクゼンとしました。
色々聞いてまわったところ、地域によって薬剤師の配置数に差があって忙しさのレベルも店舗によりかなり違うらしいですね。
それで人数がちゃんと配置されている店舗に異動願いを出したんですが、人数が少ないところから出してもらえるわけもなく通りませんでした。
せっかく入った大手を辞めてしまう決心がなかなかつかずにいたのですが、転職サイトの担当者に「大手から中小に転職する人は珍しくない」と聞いて決めました。
いくつか薬局を見て回ったんですが、中でも余裕を持って薬剤師を配置することを重視している薬局が雰囲気が良く気に入りました。
転職して残業がほぼなくなり休日出勤もなくなったので、これから趣味でも見つけようかなと思っています。
30代 男性 奈良県
大手を辞めて転職成功している薬剤師さんは、どの方も現状の不満や次の職場へ望む条件を転職エージェントとしっかり相談しています。
中小だからこそ色々な職場があるので、じっくり相談してできるだけ希望に近い職場を見つけてもらいましょう。
大手出身者への転職エージェントからのアドバイス
近年大手チェーン薬局は、M&Aにより店舗数を拡大し、広く事業を展開して規模を拡大させている企業が多いです。
新卒者もたくさん採用しますし、大手チェーンを選ぶ薬学部就活生は多いですね。
大手は企業としては成功しているかもしれませんが、働く人にとって良い環境とは限りません。
もちろん大手が合っていると感じる方もいますが、ライフスタイルや性格によって、大手が働きにくいと感じる方は意外と多いです。
待遇や働くペース、環境や人間関係に不満や不安を感じたら、ぜひ一度転職エージェントに相談してみてください。
転職エージェントは、必ずしも転職を薦めるわけではありません。
お話を聞いた上で、今の職場で様子を見た方が良いのか、もっと良い職場に転職する方が良いのか判断するアドバイスをします。
大手出身の薬剤師さんは、「せっかく大手に就職したんだから、辞めるのはもったいない」と感じる方が多く、心身ともに疲労が限界になるまで転職を考えない方も多いです。
健康を損なう前に、もっと自分に合う職場はないかな?と考えてみてくださいね。
大手を辞めることは、決してマイナスではありませんよ。
まとめ
採用人数が多い大手チェーン薬局は、離職率もそれなりに高いです。
年収の低さや、薬剤師数がギリギリの店舗が多いこと、異動の多さなどが退職の理由となってるよう。
大手で働くことは不満が生まれやすい一方、大手で働くことへの安心感もあるため、なかなか転職に踏み切れない方が多いです。
ただ就職後数年で大手を辞めてしまっても、大きなデメリットはないですし、その後の転職で不利になることもありません。
むしろ中小薬局は大手出身者を求めているので、大幅な年収アップも見込めます。
大手での仕事に不満を感じている方は、転職を視野に入れて、今後の薬剤師人生をどう過ごしたいか考えてみてくださいね。
転職エージェントおすすめの転職サイト
マイナビ薬剤師
「求職者のニーズにベストマッチする求人を見つけること」を重視しているため、転職者の満足度が高い転職サイトです。
親会社が大手人材関連企業なので、大手企業との繋がりが太く掲載求人数も多いですが、20~40店舗の中堅チェーンや個人薬局にもシッカリ営業しているので、幅広いジャンルの求人があります。
求職者からヒアリングした希望と、企業から収集した情報の2つを活かし、求職者・求人先の希望をしっかりマッチさせることから、実際に求職者に人気がある転職サイトですよ。
ファルマスタッフ
高年収・キャリアアップを叶えやすい上に、紹介先にも詳しく頼れる転職サイトです。
厳選された求人ばかりのため転職後に不満が出にくく、マッチング後の離職率は業界内で低い方です。
ファルマスタッフは業界トップクラスの調剤薬局の子会社なので、調剤薬局の業務や実情に詳しく、面接にも必ず同行してくれます。
ファルマスタッフのエージェントは、年収や勤務条件の交渉を、かなり粘り強く頑張ってくれます。
他社で紹介されて希望が叶わなかった求人が、ファルマスタッフに交渉してもらって希望が合うようになったという実例もありますよ。
薬キャリ
薬キャリは、親会社であるエムスリーが医療系の人材紹介会社としてかなり有名で、企業・病院から求人掲載の依頼がかかりやすいです。
求職者・求人先どちらともメール・電話でのやり取りが中心となり、効率を追求しているため求人数が業界一です。
面談に時間をかけないので相談しながら転職したい方には不向きですが、転職に手軽さを求める方には向いています。
実際に転職目的が明確で、行動力のある薬剤師には「スピーディーに転職ができる」と評判ですよ。
転職エージェントが語る転職に成功する薬剤師と失敗する薬剤師の違い

薬剤師生活において、1度や2度の転職自体は珍しくありません。
でも中にはせっかく転職したのに、新しい職場に満足できず、転職を何度も繰り返してしまう人も…。
転職エージェントとして働いていた筆者が、『転職に成功する薬剤師』と『転職に失敗する薬剤師』の特徴を、事例をもとにお伝えします。
転職エージェントを有効利用して転職を成功させるコツもまとめてありますので、転職を考えている方はぜひチェックしてくださいね。
転職エージェントが語る転職に成功する薬剤師と失敗する薬剤師の違い

転職エージェントとして働いていた筆者が知る薬剤師の転職サイト10社について、実際にお会いした求職者さんの感想と他社出身のエージェントから聞いた業界内の評判を元にご紹介します。
元転職エージェントがおすすめする、薬剤師の転職サイト10社の徹底比較ランキング!

カオリ

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