薬剤師5大転職理由

調剤薬局勤務の薬剤師のワークライフバランスとは

 

薬剤師の職場はどこも人手不足だから、忙しいのは仕方ない。
そのように諦めていませんか?

近年、日本人のワークライフバランスが叫ばれて久しいですが、調剤薬局に勤務の薬剤師の皆さんも「ワークライフバランス」について、一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

ワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは“内閣府ホームページ 仕事と生活の調和実現に向けて[i]”によると「仕事と生活の調和」と訳され、次の通りとされています。

仕事と生活の調和とは
老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態である。

仕事ばかりでワークライフバランスが取れなければ自らのスキルアップは望めず、『プライベートでの人とのつながりを持つ時間』と『心の余裕』、場合によっては心身の健康をも失ってしまうでしょう。

人それぞれに人生における仕事の意味、仕事に求める対価の違いなど多様な考え方があることを念頭に置きつつ、次のことを「調剤薬局薬剤師のワークライフバランス」の主題として考察していきます。

十分な給与を得て、意欲を持って働き、遊びや子育て、夫婦、家族との時間を大切にしつつ働ける職場選びをするには

結論から言えば、調剤薬局薬剤師がワークライフバランスを保つこととは、残業を減らせるだけの自身のスキル=内的要因を高め、労働環境に起因する環境因子のバランスをとることといえるのではないでしょうか。(図1)


図1 ワークライフバランスの因子、長時間労働をしている状態

自分の能力と見合っていない職場を選ぶと残業が増えるともいえるわけですが、薬剤師の残業時間が増える原因の多くは、病院の診療時間や会社の経営方針などの環境因子です。被雇用者だけの努力だけではどうにもできないものです。

今一度自身の職場環境について冷静に見つめなおし、転職も辞さず、薬剤師の労働環境を考え直してほしいのです。

責任感で長時間労働をしてはいけない、健康への悪影響

薬剤師には薬剤師法第21条に明文化されている調剤の義務があります。
人の役に立ちたいという人も多いですし、その使命感から労働時間管理の意識が希薄になりがちです。
自分が頑張れば良い!と。

過労はワークライフバランスを必ず悪化させます。

  • 過労は脳・心疾患や精神障害・自殺のリスクを高め自らの心身の健康を損ないます[ii]
  • 替えの利かない肉体と精神の健康を失います。
  • 心疾患は突然死の原因に、精神障害は治療が長期に渡り自殺に至る危険さえあります。

調剤薬局では週40時間を大きく超過する長時間労働に対して労使ともにルーズになりがちである事が原因のひとつでしょう。

門前の調剤薬局勤務の場合は、病院やクリニックの診療終了時間よりも閉店は遅くなります。混雑する時間が遅い時間帯の場合は、法定労働時間の8時間を超える長時間の労働になります。

良い意味でも悪い意味でも、責任感のある薬剤師ほど自分に無理を利かせ、自身の長時間労働を厭わず働いている傾向にあります。

一部の経営者は、このような薬剤師を酷使しがちです。
薬剤師を増員をするよりも、長時間労働をしてくれる薬剤師に働いてもらった方がコストが安く済むからです。

薬剤師のスキルアップが時代のニーズになる

薬剤師は働けば働くほどスキルアップするかというとそんなことはなく、業務をこなすのが上手くなるだけです。
薬剤師は常に医療の進歩に合わせてスキルアップする必要がありますので、業務外に時間を割く必要があります。
薬局薬剤師の継続したスキルアップを決定づけたのが、平成28年度調剤報酬改定にて新たに設けられた“かかりつけ薬剤師指導料”です。

その名の示す通り自分専任の薬剤師を患者が選べる制度です。
かかりつけ薬剤師になるには、薬局での3年以上の実務経験に加え、研修により認定薬剤師の認定を受けて事前に厚生局へ届出が必要です。
かかりつけ薬剤師制度は、一定レベル以上の薬剤師であることを担保する制度と言えます。

患者自身がかかりつけ薬剤師を決めたら、どの病院で処方箋をもらっても原則はそのかかりつけ薬剤師から服薬指導を受けます。

患者側からみたこの制度の利点は、担当薬剤師に体調や生活習慣をしっかり伝えることで、下記の事柄などを多岐にわたって観察してもらえる事です。

患者さまがかかりつけ薬剤師に確認してもらえる事柄

  • 薬の効果は十分に出ているか
  • 飲み方が間違っていないか
  • 他の病院の薬との飲み合わせに問題はないか
  • 副作用がでていないか
  • 重大な病が見逃されていないか

患者はかかりつけ薬剤師に対して余っている薬の整理を頼むこともでき、夜間や休日の電話問い合わせも可能。よりきめ細かい服薬指導がしてもらえます。
かかりつけ薬剤師は医師と連携して処方に関する問い合わせも行い、必要に応じて薬剤師の意見を処方内容に反映してもらうこともできます。

病院での血液検査の結果のわからないところや、医師にはいまさら聞けない治療を続ける意義なども、かかりつけ薬剤師相手になら気軽に聞くこともできるのです。

このように、患者にとってより身近な存在になりつつあるかかりつけ薬剤師ですが、かかりつけ薬剤師指導料の業務には、その薬剤師の腕が必要です。
だからこそ時代はスキルアップなのです。

業務外にスキルアップに時間を割けない現実


薬剤師は本来、かかりつけ薬剤師制度が無くとも最近の治療ガイドラインをベースとして、最新の症例やDIを駆使しながら科学的に薬物治療の妥当性を吟味し、副作用の予防に努めなければいけません。

かかりつけ薬剤師制度によって、薬剤師の個人評価が変わりつつあります。
職歴に加えて認定薬剤師などの各種認定制度による技術の担保が、これまで以上に重要視されるようになってきたのです。

にもかかわらず肝心の薬剤師本人が過労では、睡眠時間の確保で精いっぱいです。業務外のスキルアップに十分な時間を割くことができるでしょうか。

労働、生活、スキルアップ、遊び、休息を24時間の中でどう配分するかという時間管理が人生には必要です。
まずは過労を見直さなければ何も始まりません。

それ、仕事中毒ではありませんか?


疑ってほしいのは自分が仕事中毒になっていないかということです。

調剤薬局の薬剤師の場合を考えてみます。

薬剤師が3人以下で事務が4人ほどの小さな調剤薬局で、プレーヤーと店長を兼任しているケースの例

店長である自分の労働時間の延長がそのまま店舗の成績になるので、働けば働くほど経営者から評価されます。

評価されたいという欲求、自己の達成感を得るために、あるいはただやらなければいけないからという義務感で仕事を自宅に持ち帰りプライベートな時間と仕事の区別がつかなくなる…

こうなると危険です。仕事中毒になっている可能性があります。
仕事中毒と“仕事ができる”はイコールではありません。

仕事中毒とは、『営業時間内に部下と上司を使って仕事を完結させる、仕事の割り振り能力』、『段取り能力』、『自分の時間マネジメント』の3つが欠如した状況です。
この状況を脱するには二者択一。

自分のマネジメントスキルを磨いて部下と上司の使い方を変えるか、職場を変えるかです。
忙しさに酔っていないか考えてみる時間を作って下さい。

労働時間の常識から疑ってみてください。

先進国の中でも日本の労働時間の長さは際立っています。

長時間労働は仕方がないと思い込まず、法定労働時間の週40時間以上の労働を避けるべきであると筆者は考えます。

本国で法定労働時間を定める労働基準法は1947年に制定されましたが、元々の趣旨は疲労や結核の原因になっていた長時間労働を是正する為、労働時間の上限を規定することでした。

禁止されているはずの時間外労働が現在は36協定さえ結べば事実上青天井で時間外労働が認められることになり労働時間の上限規制は単なる残業の計算開始基準時間となりました[iii]

繰り返しますが、法定労働時間とは本来は労働時間の上限です。

残業はある程度発生するにしても、常態化させないように残業を発生させる因子が少ない職場を選択した方が良いでしょう。

早く帰宅しスキルアップをする、遊ぶ、休息するなど時間の使い方が増えます。
もちろん、何よりも仕事を長時間したいと思うのも一つの価値観ではあります。

ただし、それでは薬剤師としてスキルアップして社会を知る機会を失い、生き残っていけないでしょう。

ワークライフバランスはなぜ必要なのか

なぜワークライフバランスをここまで考えて欲しいかと言うと、人生は有限かつ仕事だけではないと伝えたいからです。

自分の夢を具体的に一言で表現するとどんな言葉になりますか。
その時に仕事の目標を口にする場合は、まだなりたい自分を描いていない証拠と言えるでしょう。
本当に仕事だけをしたいでしょうか。

  • 大切な人と家族と子供との時間を大切にしたい
  • 海外旅行に行きたい
  • 青い海でダイビングをしたい
  • 一日中ゲームがしたい
  • 空いた時間でただ休息したい
  • 進学して学びなおしたい

自分のしたい事はないですか。

冠婚葬祭、子供の行事や、家族に支えが必要な時、時間が確保できなければ何もできません。
仕事が無くなりベッドの上でいよいよ最期の時に何を思うか、隣に誰にいて欲しいか想像してください。

仕事は寿命全体の三割以下を占めるだけのものです。
何かに振りまわされてきたことに、挑戦しなかったことに、孤独に、後悔が押し寄せるもしれません。

いま夢と現実のミスマッチがあるなら、仕事との関わりを見つめなおす機会です。被雇用者は人生の切り売りで収入を得ていますので、自分の安売りはオススメしません。
仕事の意味を考えることもなく働いているようなら、有限な人生の主導権を取り戻すため本当にその職場で良いのか考えてみてください。

ワークライフバランスを整えることは人生を変える事と言い換えても大げさではないはずです。


 
 
 
 

薬剤師としてワークライフバランスのとれた職場に転職したい。
そう思ったらこちらの記事をご覧ください。


かつては大手調剤チェーンのエリアマネージャーとして多くの薬局をみてかた筆者による残業のない調剤薬局の探し方をまとめたものです。
転職エージェントといえど、ここまで調剤薬局のことは知っていないだろうなと思える内容ですよ。

[i]参考文献1 内閣府ホームページ仕事と生活の調和実現に向けてhttp://wwwa.cao.go.jp/wlb/towa/definition.html

[ii]参考文献2 労働安全衛生総合研究所https://www.jniosh.go.jp/publication/houkoku/houkoku_2012_01.html

[iii]参考文献3 濱口圭一郎 日本の雇用と労働法 日本経済新聞出版社 p124-125

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薬剤師生活において、1度や2度の転職自体は珍しくありません。
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転職サイト比較

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元転職エージェントがおすすめする、薬剤師の転職サイト10社の徹底比較ランキング!

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イッシー

イッシー

病院薬剤師から調剤薬局に縁故採用で転職するも、とんでもないブラック企業だったことが判明。その後薬局を立て直して大手に売却。エリアマネージャーまで昇格するも、ワークライフバランスを見つめ直し、中規模調剤チェーンに転職。(そのときの転職体験談はこちら)現在は面対応薬局で患者様への服薬指導に全力を注ぐ。

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