今後の薬剤師

H30年診療報酬改定によって、今後は薬剤師の転職が厳しくなる!?

 

平成30年の2月7日に、本年の4月から施行される、診療報酬改定の内容が発表されました。
(出典:厚生労働省:平成30年度診療報酬改定について

平成最後の改定と言われる今回の改定は、表面上だけを見ると診療報酬本体は+0.55%、調剤でも+0.19%のプラス改定となっています。

しかしながら、大手チェーンを狙い打ちにした内容ともいえ、実際に転職市場にも影響が出ると言われています。
今回はその理由をご説明いたします。

H30年診療報酬改定の目的


現在の日本では、高齢化は避けては通れず、医療費もさらに増大してきています。

政府の財政健全化計画で掲げる「16~18年度の社会保障費の自然増を年5,000億円に抑える」という目安を達成するため、様々な対策が診療報酬改定に盛り込まれました。

調剤薬局に対しては、「大手チェーンが儲けすぎている!」ということが、診療報酬の審議においても再三取り沙汰されています。

  • 同じ企業の保険薬局の店舗数が多いほど、1店舗当たりの利益率が高い
  • 同じ病院からの処方箋ばかり受けている(集中率が高い)薬局の方が、薬のロスが少ない
  • 医療機関と同じ敷地にある薬局では、収益率が良い

ということから、これらの薬局には厳しい改定となっているのです。

前述の改定率である+0.19%とは別枠で、「いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化」が▲0.29%規模で行われているのです。

H30年診療報酬改定で変わった内容とは

最近の改定では、調剤薬局に対しては “モノからヒトへ” というテーマが掲げられています。

“薬を作る作業(モノ)”を淡々とこなすのではなく、“服薬指導や残薬調整などの患者様へのアプローチ(ヒト)”を頑張りなさい。

という国からのメッセージなのです。
実際の改定内容の一部を、下記に示します。

大型門前薬局等は基本料が減点に

グループ全体で月に40万枚や4万枚を超える薬局のうち、集中率の高い店舗(85%以上)や大型店舗(月4,000枚以上)では基本料が大きく減点されます。
通常の41点に対して、25点、20点、15点、10点という点数になる見込みです。

⇒現行でも、調剤基本料2や3によって減点を行っていましたが、例外規定もあり実際に算定している薬局はほとんどありませんでした。

大手では大病院前の基幹店舗が軒なみ減点されるので、非常に苦しい改定となっています。

後発品使用率の条件がさらに厳しく

これまでは65%と75%がラインとされていましたが、今後は75%、80%、85%がラインとなります。

⇒65%~75%に位置する薬局は非常に多く、後発医薬品の置き換え率を高められない薬局では軒並み減収となります。

内服調剤料の引き下げ

前回の改定に引き続き、「対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるため」として、15日分以上に係る内服薬調剤料の引き下げが行われました。

⇒これまで収益率の高かった、慢性期の病気の患者様が多い薬局においては減収となってしまうでしょう。

また、今回は割愛していますが、薬価も▲7.48%のマイナスとなっているので、長期処方の多い薬局では薬価差益も減少してしまう、ダブルパンチとなるのです。

薬剤服用歴管理指導料の引き上げ

薬剤服用歴管理指導料は、3点引き上げが行われました。(38点→41点、50点→53点)

⇒これも、「モノからヒトへ」の転換の一部です。

薬剤師は、これまで以上に服薬指導併用薬チェックを行わなくてはならないでしょう。

ちなみに、お薬手帳を活用していない薬局では、大幅に点数が減らされることとなりました。(50点→13点)

重複投薬・相互作用等防止加算の改定、服用薬剤調整支援料の新設

重複投薬・相互作用等防止加算については、残薬調整以外の場合では点数がアップしました。(30点→40点)

6種類以上の薬剤を飲んでいる患者様において、内服薬の減薬を医師に提案して、実際に2種類以上の減薬を行うことで、新たに点数を算定することが可能となりました。(125点)

⇒これまで以上に、医師との連携も求められます。

在宅患者訪問薬剤管理指導料などの点数の引き上げ

管理指導料の考え方が同一日から同一月へと見直すなどの変更点も加えられていますが、全体的な点数としては増加しています。

⇒今後はよりいっそう、在宅を担っていかなくてはならないでしょう。

基準調剤加算の廃止、地域支援体制加算の新設

前回の改定では基準調剤加算(32点)が一本化されて話題を呼びましたが、今回は地域支援体制加算(35点)が新設されました。

⇒調剤基本料1を算定している薬局では、基準調剤加算と比べても基本的な内容は変わっていませんが、「一定の実績」が明文化されていることが特徴です。

常勤薬剤師1人当たりの実績
となるので、在籍する薬剤師は意識していかなくてはなりません。

かかりつけ薬剤師に係る点数の引き上げ

  • かかりつけ薬剤師指導料
    (70点→73点)
  • 乳幼児服用加算
    (10点→12点)
  • かかりつけ薬剤師包括管理料
    (270点→280点)

この3点はそれぞれ引き上げとなりました。

⇒届け出薬剤師の在籍要件は“6か月以上在籍から12か月以上在籍”へと変更になり、厳しい改定となりました。

一方で、勤務時間の要件が週32時間以上だったのが、育児・介護休業法で定める期間(最長2年)は「週24時間以上 かつ 週4日以上」へと見直されました。
小さい子供を持つ方は働きやすくなるでしょう。

H30年診療報酬改定による薬剤師の転職市場への影響

大手の収益悪化により、求人条件が悪化

大手では収益が大きく悪化してしまうため、人件費の削減などに踏み切る可能性が考えられます。

求人条件が悪くなり、中小チェーンもそれに追随する可能性があるでしょう。

個人薬局でも、後発医薬品置き換え率の低い薬局では収益悪化

個人薬局においても、医師の協力が得られない店舗などでは収益が悪化することでしょう。

長期処方が多い薬局においても、内服薬の調剤料や薬価差益の減少の影響を受けることとなります。

求人条件が悪くなったり、人員圧縮により業務が大変になる可能性があるのです。

新規開局が減少し、求人が減ってしまう

調剤薬局として利益を出すことが難しくなるので、新規開局が減少していくと考えられます。

求人も減ってしまうので、転職も難しくなるかもしれません。

また、業績悪化により閉局する薬局も出てくることでしょう。

そこで働いていた薬剤師も転職市場に出てくるため、競争はより激しくなると考えられます。

これまで以上に、多様な業務内容を求められる

モノからヒトへ”というように、これまで以上に患者様に対する業務内容が求められることでしょう。

患者様や医師に対する提案が苦手な方では、働きにくくなっていくと考えられます。

在宅が増えることから、帰る時間が遅くなるなど、勤務内容も変わってしまうかもしれません。

かかりつけ薬剤師の条件の変更により、流動性が悪くなる

かかりつけ薬剤師の条件が6か月から12か月へと変更になりました。

これにより、店舗間異動などを含め、人を動かすことで収益が悪化してしまうようになったのです。

辞めようとする方を引き留めるなど、求人が出る機会が減るかもしれません。

また、週24時間以上かつ週4日以上の条件により、これまでであれば辞めていた方が残るというケースも出てくるかもしれません。

さらに、地域支援体制加算を算定していく上でも、様々な実績が要件とされています。

複数名のパートで運営していくよりも、正社員を固定して実績を積み重ねるという薬局が増えるかもしれません。

転職をする側の薬剤師としては、デメリットとなることでしょう。
パートで働くママ薬剤師さんの求人が減る可能性も考えられます。

転職をする薬剤師はどうしたら良いか


転職をする薬剤師としては、これまで以上に競争が激しくなると考えられます。

これからの薬剤師は、「対人業務」をスムーズにこなせることが重要となってきます。

服薬指導のスキルや、かかりつけ薬剤師のスキルを磨いていくことが必要となるでしょう。

若いうちからキャリアアップやスキルアップを、しっかりと行っていかなくてはなりません。

資格を持っているだけではなく、付加価値を高めていかなくてはならないのです。

実際に転職をする際にも、これまで以上にコツやテクニックが重要となります。
転職活動の方法や履歴書、職務経歴書の書き方についても、工夫していかなくてはならないでしょう。

まとめ

実際に4月になってみないと分からない部分もありますが、今回の改定は転職をする薬剤師さんには厳しい内容となりそうです。

求職者同士の競争も激しくなっていくので、スキルを伴わない薬剤師さんでは良い条件の求人は獲得できないかもしれません。

また、スキルの高い薬剤師さんでも、転職面接において自己アピールが大切となってくるでしょう。
当ホームページでは転職に際しての様々なコツもご紹介しているので、参考にしていただければ幸いです。

H30年5月23日追記

実際にH30年診療報酬改定を経て、大手チェーンはどうなったのでしょう?
結論から述べると、予想通り大打撃を受けたわけですが、具体的にどのような影響を受けたのでしょう?
詳しくはこちらの記事でご確認ください。

>>【速報版】H30年度診療報酬改定後の大手チェーン薬局の動向

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ヤス

製薬会社MR→ドラッグストア→調剤薬局と2度の転職を経験。 現在は都内の中規模調剤チェーンで管理薬剤師をしています。調剤業務だけでなく、地域活動や講演活動にも奮闘中。得意な科目は小児科と精神科、婦人科など。趣味はドライブとスノーボード。

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