今後の薬剤師

【速報版】H30年度診療報酬改定後の大手チェーン薬局の動向

 

以前コチラの記事(「H30年診療報酬改定によって、今後は薬剤師の転職が厳しくなる!?」)でご紹介した通り、H30年度の診療報酬改定によって、大手調剤チェーンは大打撃を受けることが予想されていました。
では、実際にはどのようになったのか、本稿執筆時点のH30年5月23日現在の状況をご説明いたします。

H30年度診療報酬改定で大手調剤チェーンはどうなったか

日本調剤では調剤基本料1の算定割合は85%→48%に

大手調剤チェーンの日本調剤は、2018年5月10日に行った株主向け決算説明会で、4月1日時点の調剤報酬の算定状況を公表しました。
結果は下記の通りであり、これまで85%であった調剤基本料1の算定割合は48%まで低下しました。
このことから、診療報酬改定で大きな打撃を受けていることがわかります。

調剤基本料3(15点) : 50%(294店舗)
調剤基本料1(41点)  : 48%(281店舗)
調剤基本料2(25点)  : 1%(6店舗)
特別調剤基本料(10点): 1%(6店舗)

地域支援体制加算(旧基準調剤加算)も58%→32%に

診療報酬において、特定の項目を満たしている薬局では、高いレベルの医療を提供している薬局とみなされ、調剤基本料に加えてインセンティブを取得することが認められています。
従来は基準調剤加算(32点)と呼ばれるものでしたが、H30年度の改定では地域支援体制加算(35点)へと改められました。
前述の日本調剤では、これらを算定している薬局の割合は、58%から32%まで低下してしまったそうです。
これらは調剤報酬に純利益として上乗せされるため、年間20,000枚の処方箋を応需している薬局では、実に640万円の減益となってしまうのです。

どのくらい収支に影響が出るのか

日本調剤の発表した業績予測では、2018年度の調剤薬局事業は、売上高2,131億3,300万円(前年度比3.9%増)、営業利益94億3,600万円(同24.0%減)とされています。

いわゆる増収減益であり、調剤事業は伸びてはいるものの、利益が低下してしまっていることが読み取れます。

大手調剤チェーンが一人負けしている現状

今回は日本調剤を例に挙げてご説明いたしましたが、その他の大手調剤チェーンにおいても、同様の状況にあると考えられています。
また、地域支援体制加算の要件には経過措置があるものも多く、取得できる薬局は減っていく可能性もあります。

一方で、グループ全体で4万枚を超えない小規模チェーンや個人薬局では影響は少なく、大手調剤チェーンの一人負けといえそうです。

H30年度診療報酬改定に対する大手調剤チェーンの対応

大手調剤チェーンの一人負けとまで言える状況に対し、大手調剤チェーンではどのような対応をしているのでしょう?
筆者の入手した情報によると、以下のようです。

地域支援体制加算を取得できない店舗では、営業時間を短縮に

これまでは、基準調剤加算を取得するには、週45時間以上の開局をしなくてはなりませんでした。
そのため、大病院の門前などでは開局時間を稼ぐために、病院からの処方箋が来ない時間帯であっても開局をしていました。
実際には、平日午前中の外来がメインであってもです。

しかし、今回の改定で地域支援体制加算を取得することが不可能となった店舗では、営業時間の短縮を断行しています。
売り上げが減少する分、人件費を圧縮して対策をしているのです。

集中率を緩和すべく、在宅を推進している

今回の改定で打撃を受けた項目としては、調剤基本料地域支援体制加算が挙げられます。
現行の報酬制度では、調剤基本料1を取得できれば地域支援体制加算も容易に取得できるため、まずは調剤基本料1を目指す方針をとっているそうです。

そのための手段として、在宅医療の推進が挙げられます。
施設調剤などでまとまった人数を確保することが出来れば、特定医療機関からの集中率を緩和することができるため、在宅医療を積極的に獲得しようとしているのです。

すべての薬局で地域支援体制加算の取得を目指している

地域支援体制加算は、国の方針をあらわしています。
現状では直ちに算定できなくても、今後のことを考えると算定していくように努めていかなくてはなりません。

薬局によっては、1~2年後の取得を目指して、1つ1つ項目をクリアするように指示が出ているそうです。

地域支援体制加算を取得して、国の求める薬局の姿を実現していくことが、今後の中長期的な企業の発展へとつながるのです。

H30年度診療報酬改定で中小調剤チェーンはどうなったか

H30年度診療報酬改定で中小薬局ではどうだったかというと、小さいところにとっては影響はほとんど無く、むしろ地域体制加算やかかりつけ薬剤師指導料の加点で増収になったところもあるようです。

また興味深い事例として、一都三県にチェーン展開する中規模チェーン(以下A社)をご紹介したいと思います。

A社の特徴

多くの調剤薬局では、点数を加算することに躍起になっていることでしょう。
大手では特にそうですね。

しかしA社では、かかりつけ、在宅、GE加算などの点数にあまりこだわっていないそう。医薬品は基本的に先発で出すという会社方針なのです。
後発医薬品の変更率も70%にも届かない店舗がほとんどです。
患者様にも、GE変更へ促すようなことはしていないそうです。

A社の目指す姿

なぜそのような会社方針かというと、患者様の立場からすると色々と点数を重ねられ、薬代が高くなるのはどうなのかという考えからなのです。

患者様から「他の薬局では高かったけど、ここは安いからまた来よう」
このように思ってもらえる薬局を目指しているのだとか。
もちろん従業員である薬剤師の負担軽減のという副次的なメリットも兼ねてのことです。

「今後生き残っていけるの?」という疑問も生じますが、実際にお勤めの方にお聞きしたところ、会社自体はかなり安定しているとのこと。
給料もそこそこだそうです。
ノルマ的なものはないのでかなり働きやすいのだとか。

H30年度診療報酬改定で変更となった業務内容

今回の診療報酬改定を機に会社からきた指示はただ一点、「手帳の持参率を上げよう」との方針があったそうです。
「手帳を持って来てください」という掲示を店内にするようにと言われたのみだそうです。

今時、このような薬局も存在するのですね。目から鱗に感じる薬剤師さんも多いのではないでしょうか。
A社としては、普通のことをやっていても生き残れないと考えた末での、会社方針のようです。

実際にA社で働いている方の意見

今回インタビューに応じてくださった薬剤師さんは、A社の総合病院の門前の店舗にお勤めだそうです。
ご本人は会社の方針と同じく、在宅やかかりつけは積極的には関わりたくなく、お勤めの店舗も総合病院の門前とあって、現在の職場環境に大きな不満はないそうです。

ご本人はお勤めの会社に対し、以下のように仰っていました。

現在の職場に満足しているといえばそうでないこともありますが、何かとお世話になっていますし、わざわざ他へ転職するほどの理由もありません。
また、わたし自身転職する際は、今の職場に不満があるというよりは、今の職場ではできない事、他にやりたいことが見つかった時に転職したいと思っています。
マイナスな理由よりプラスの理由の方がいいと考えていますので。

在宅やかかりつけはやっていません。
わたし自身あまりそこはやりたいと思わないので、その辺は今の会社と合っていると思います。

今の職場でできないことは今の所見つからないので、特に転職理由はないです。
今後見つかれば転職するとは思いますが、転職されて行く方の中にはもちろん、在宅をやりたい、クリニックで働きたいなどがありました。

大手で働いて積極的に点数を加算して会社の利益に貢献するというのも、薬剤師としての一つの生き方です。
しかし、そのような働き方に疲れたときは、今回ご紹介したA社のような薬局チェーンで患者様目線で働くというのも一つの生き方かもしれませんね。

今後の薬剤師の働き方はどうなるか

一説では、地域支援体制加算を取得するためには、処方箋1日250枚、薬剤師が6人体制規模の薬局でなければ厳しいともいわれています。

その中で、医師としっかりと連携をとって残薬や併用薬の調整、服用薬剤数の調整などを担い、他の保険医療サービスとの連携や副作用報告などの業務もしていかなくてはなりません。
そのため、大手チェーンの中でも、生き残っていく薬局や潰れてしまう薬局が出てしまうと考えられています。
薬剤師の働き方も、これまで以上に大きく変わっていくことでしょう。

今後予想される変化

  • 処方箋枚数の多い薬局が生き残るようになり、業務は大変になる
  • 地域支援体制加算を取得の為に、服用薬剤調整など様々な業務が増える
  • 他の医療従事者や介護従事者との連携が求められる
  • 効率的な業務が求められるため、薬歴の書くスピードや薬の知識があることが前提となる
  • 業務時間も長くなり、正社員の負担が大きくなる
  • 産休育休制度が充実している大手では、残された正社員の負担が大きくなる

まとめ

H30年度診療報酬改定による影響

  • 大手チェーンの一人負けは、現実のものとなっている
  • 国の方針に従っていくためには、薬剤師の働き方も変わっていく
  • スキルの高い薬剤師が生き残る時代になる
  • 大手で働く正社員は、過酷な労働が待ち受けているかも…?

H30年度診療報酬改定が施行されて1ヶ月半が経過しましたが、前評判通り大手が苦しいという結果となっています。
しかし、大手も黙って衰退していくということもなく、働き方や業務の仕組みを調整して、何とか生き残っていこうと対策しています。

薬剤師の働き方も、今後は大きく様変わりしていく可能性が考えられるので、今後の動向にも要注意です。

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ヤス

製薬会社MR→ドラッグストア→調剤薬局と2度の転職を経験。 現在は都内の中規模調剤チェーンで管理薬剤師をしています。調剤業務だけでなく、地域活動や講演活動にも奮闘中。得意な科目は小児科と精神科、婦人科など。趣味はドライブとスノーボード。

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