今後の薬剤師

大手勤務の薬剤師が知っておきたい「リージョナル制度」とは

 

H30年の調剤報酬改定が大手に対して厳しいものとなったことは、記憶に新しいものです。
そんな中で、最近になって大手調剤チェーンやドラッグストアなどでは、『リージョナル制度』というものを導入しはじめています。
今後の薬剤師の働き方に大きくかかわるので、ぜひこちらの記事を確認して、「リージョナル制度がどういったものなのか」、「薬剤師にとってどのように影響していくのか」を、しっかりと理解しましょう。

そもそもリージョナル制度とは?

リージョナル制度の概要

リージョナル制度とは、いわゆる地域限定社員の制度のことを指しています。
全国どこでも転勤のある『ナショナル(全国)社員』、全く転勤のない『エリア社員』とは異なり、特定のエリア内での転勤があることが特徴です。

全国規模の会社では、「人手が足りているエリア」と「人手が足りていないエリア」が明白となり、社員のやりくりに頭を悩ませています。
そこで、転勤を受け入れてくれる社員と、事情があって自宅付近で働きたい社員の条件に差を付けることで、つりあいをとっているのです。
薬局業界だけでなく、大手アパレル業界や飲食業界などでも、このリージョナル制度は採用されています。

  給与 転勤 借り上げ社宅
(家賃補助)
ナショナル社員 高い あり
全国どこでも
あり
リージョナル社員 中程度 あり
関東ブロック内など
あり
エリア社員 低い なし
自宅から
なし

リージョナル社員のメリットとデメリット

リージョナル社員を選択すれば、実家など希望の場所からそう遠くないエリアで働くことができ、それなりの給与が保証されています。
借り上げ社宅も利用できるので、単身者であっても経済的負担を減らすことができます。

しかし、リージョナル社員では多くの場合、エリアの中に不人気な地域も含まれているので、注意をしなくてはなりません。
例えば、東海エリアでは石川県や福井県、関東エリアでは栃木や群馬などの北関東などです。

人気のエリアはエリア社員が占めてしまうことも多く、リージョナル社員は不人気の地域に優先的に配属されてしまうという現実があるのです。

リージョナル社員は、ナショナル社員とエリア社員の「いいところ取り」ができると説明されますが、ある意味では「悪いところ取り」をしているのです。

リージョナル制度が薬剤師に与える影響

薬剤師の業界にもリージョナル制度は以前からあった

薬剤師の業界においても、会社によって呼び名は異なりますが、「ナショナル・リージョナル・エリア社員の制度」は、以前から存在していました。
しかし、転職が容易である薬剤師は異動をさせようとすると退職されてしまうことが多く、運用はほとんどされていませんでした。
多くの企業では、ナショナル社員でありながら、リージョナル社員~エリア社員に近い働き方が可能となっていたのです。

背景にある、薬剤師人数の増加とドラッグストア人気

では、なぜ今回のようにリージョナル制度が断行されたのでしょうか?
その背景にあるのは、薬剤師数の増加です。
2017年の国家試験合格者数は9,479人であり、毎年10,000人近い薬剤師が社会に出てきています。
しかし、ある統計では新卒薬剤師の需要は、4,000~5,000人程度にとどまるといわれています。

そんななかでドラッグストアの人気の高まりも手伝って、大手グループでは薬剤師の獲得に困らなくなりつつあるのです。
現場の混乱はもちろんありますが、多少の人数が辞めてしまったとしても、運営する上で問題となることはないのです。

予想通り、転職者は続々と増えている

本稿の執筆時点である7月に調査したところ、大手ドラッグストアや調剤薬局の薬剤師が転職サイトに登録するケースが増えているそうです。

要因としては先般の調剤報酬改定に加え、これらのリージョナル制度が影響し、大手からの転職希望者が増えていると考えられます。

ドラッグストアは働き手の負担が大きくなりやすいため、給与を高くすることでバランスをとっていました。
しかし、今後仕組みが変わってリージョナル制度が普及していった場合、これまで通りの働き方をしようとすると、エリア社員を選択しなくてはなりません。
もともと不規則なシフトや激務で転職を考えていた方は、給料が下がるくらいならと、このタイミングで転職を考えるのです。

リージョナル制度を導入した企業の一例

某大手ドラッグストアでは、2018年の前半くらいから、リージョナル制度を導入しました。
こちらの企業では、もともと全国転勤コースとエリア限定コースがありましたが、やはりうまく機能していなかったそうです。

これまではほとんどの薬剤師が全国転勤コースを選択していましたが、強制的な異動はほとんどありませんでした

そこで、これらの制度の見直しの意味も含めて、リージョナル制度が導入され、結果としてかなりの薬剤師の方が異動の対象となってしまったのです。
異動を命じられて実際に退職した薬剤師さんにインタビューをすることができたので、ご紹介いたします。

ドラッグストアを退職した男性薬剤師(20代後半 関東在住)

私のいたドラッグストアでは、今回新しくリージョナル制度が導入されました。赤色のドラッグストアです。

リージョナル社員の給与は全国転勤コースと変わらなかったので、とりあえずはほとんどの社員がリージョナル社員を選択しているみたいでした。
エリアをブロックで指定することができたのですが、関東ブロックであれば東京・千葉・埼玉・神奈川に加えて、群馬・静岡も対象となるので、この2つだときついよね、と同期でも話をしていました。
エリア社員を選択すると基本給が10%(3万円くらい)下がってしまう上、今後引っ越すと借り上げ社宅も無くなってしまうので、どうしようかなぁとは考えていました。
そうしたところ、群馬県の某市への転勤を言い渡されたので、退職を決意しました。
異動はかなり急に言われるので、とりあえず転職サイトに登録をして、有給消化をしながら転職先を探しています。

聞いた話ですが、私以外にも多くの薬剤師が退職しているようでした。
薬剤師の中には年収にこだわらずエリア社員を選択する方も多いようで、そのような方は都心から近いエリアを希望しているということです。
私のように全国転勤やリージョナルを選択した場合、現時点で都心やアクセスの良いエリアにいると、次々に転勤の声がかかっているようです。

そんなに不満がある会社ではなかったですが、ゆかりのない地方に引っ越してまで働こうとは思わないですね。

ドラッグストアを辞めた薬剤師は次はどこに転職するのか

筆者の知り合いが実際に大手ドラッグストアを退職しようとしていますが、転職サイトに登録すると次の転職先もドラッグストアを提案されるそうです。

一度ドラッグストアに入った薬剤師は転職しても前職と同程度の年収を維持しようとするパターンが多いようです。そのような方は次の転職先もドラッグストアを選ぶようです。

ドラッグストアに転職するのならば、ドラッグストアへの転職に強い転職エージェントを利用しましょう。
ドラッグストアの業界に精通し、ドラッグストアの求人を多数保有している転職エージェントの特徴をこちらの記事にまとめましたので、ご覧ください。

なお、ドラッグストアは確かに高給取りですが、ドラッグストア以外でも同水準の年収を維持できる職場はあります。
詳しくはこちらの「薬剤師がお給料をアップをさせる方法には何があるか」をご覧ください。

まとめ

  • リージョナル社員は、エリア内の転勤がある働き方
  • 薬剤師の飽和につれて、実際の転勤も増えてきている
  • 転勤を拒否し、離職する薬剤師も多い

これまでは人手不足のため良い条件で働くことができた薬剤師ですが、今後はリージョナル制度のように、より厳密に働き方が分かれていくことが予想されます。

大手から転職する方も増えるので、小規模チェーン調剤などでもより競争が激化していくことでしょう。
転勤のない薬局で働いている薬剤師も、競争に負けない薬剤師になるために、スキルアップやキャリアアップを目指していきましょう!

転職を考える薬剤師の方へ

今回のリージョナル制度の導入や診療報酬改定の影響により、薬剤師の転職市場は競争の激化が予想されます。
薬剤師がすぐに辞めていくような会社であれば、受ければ受かりますが、条件のよい求人には応募が殺到します。

応募の殺到する人気求人への転職に成功した筆者の経験を元に、人気求人を確実に手に入れるためのコツを「薬剤師転職成功の6つのコツ、人気求人を手に入れるための全て」にまとめました。理想の求人を手に入れるための参考にしていただければ幸いです。

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ヤス

製薬会社MR→ドラッグストア→調剤薬局と2度の転職を経験。 現在は都内の中規模調剤チェーンで管理薬剤師をしています。調剤業務だけでなく、地域活動や講演活動にも奮闘中。得意な科目は小児科と精神科、婦人科など。趣味はドライブとスノーボード。

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