薬剤師のお仕事データ

病院薬剤師漫画『アンサングシンデレラ』を読んで感じた病院薬剤師の魅力

 

「病院薬剤師」と聞くと一般的にどのような印象を持たれていると思いますか。
きっと多くの人は病院の片隅でただ薬を作っているような地味なイメージを持っているのではないでしょうか。

そして「病院薬剤師なんて必要ない!」と思っている人も中にはいるかもしれません。

今回取り上げる漫画のタイトルは「アンサングシンデレラ」=「称賛されることのないシンデレラ(ヒロイン)」。

このタイトルを見た時、たとえ目立たないところでも患者さまの命の安全を守ろうと必死で働いている病院薬剤師たちの物語にぴったりだと思いました。

そしてその内容は、かつて病院薬剤師だった私が「そうそう!これある!ある!」と思わず共感する部分がとても多かったです。

私の同じく薬剤師の友達に、この漫画のリンクを送り、「こういうこと実際あるよね!」という話で盛り上がってしまったくらいでした。

今回は、『アンサングシンデレラ』を読んだ私の個人的な感想と病院薬剤師の魅力についてお話ししたいと思います。

以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

この漫画で共感できたところとは?

まず、この漫画を読んで共感できたところを挙げ、実際に私が同じような経験したことについて書いてみようと思います。

処方箋の疑義紹介をしたときの医師からの冷たい態度にフラストレーションを感じるところ

これは、ズバリ『薬剤師あるある』の典型的なものです。

漫画の中では、医師がケアレスミスに気付かずにを発行してしまった処方箋について、主人公である薬剤師の葵さんが確認のため医師に電話をしたところ、「今忙しい、それで合ってるから」と冷たく電話を切られてしまいます。

間違いを正してもらわなければ調剤を始めることはできないので、葵さんはその後もしつこく確認をしようとしますが、医師から「そんなケアレスミスで疑義して時間の無駄にしているんじゃない!」と怒鳴られていました。

画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

これ、私も何度も経験しています。

私たちは勝手に処方箋を修正できませんので、医師の確認した上で修正しなければいけませんよね。

しかし、確認をすると「こんな忙しいときに電話なんかして!」「そんなの知らないよ!そっちで常識の範囲で直せばいいじゃないか!」「私じゃなく、看護師に確認してよ!」などなど理不尽な答えが、お高くとまった医師から飛んでくることがあるわけです。

ただ薬剤師の仕事をしているだけなのに、自分のミスではないのに怒鳴られるその理不尽さ。

そのたびに「いいえ、医師の書いた処方箋をもとに調剤しますので、修正していただかないと困ります。」、「こちらでは修正できません。そんなことをしたら法律違反になってしまいます」など医師に「冷静に」主張しなければいけないのです。

そのストレスがたまることと言ったら・・・ もう・・・

以前、医師に疑義紹介した薬剤師の先輩が、「いいの!それで合ってるからそのまま調剤して!」と言われてそのまま調剤したところ、実際は過誤で患者さまに多大な迷惑をかけてしまった例がありました。

怒鳴られても冷たくあしらわれても、薬剤師は自分が納得できるまでしつこいくらいに医師に確認しなければいけない

この漫画の葵さんのような粘り強さが薬剤師にないと、患者さまの命を守れない結果になることを思い知った出来事でした。

服薬指導の時間を一人にあまりかけないでと先輩から指示されるところ

私もこれと同じような経験がありました。

患者さまは大勢いるので一人に時間を割いていると他の患者さまに迷惑がかかる。

「窓口では正確でスピーディーな服薬指導をしなくてはいけない。」葵さんと同じ薬剤部の先輩である(ちょっと融通の利かなそうに見える)刈谷先輩がこのように指導していますが、これは当然のことですよね。

でも、健康の問題を抱え不安な気持ちで助けを求めてくる患者さまの話をできれば聞いてあげたいですし、スピーディーに終わらせるにしてもどうやって話を切ればよいのか。

どうしたら相手に失礼にならずに話を終わらせられるのかが分からず、葵さんと同じように患者さまと先輩薬剤師の板挟みになってつらい思いをしました。

薬剤師歴が長くなった今でも、スピーディーに進めることが難しいと思うこともあるので、新人の葵さんは余計に難しかったのではないかと想像できます。

漫画では、葵さんは一人の患者さまに多くの時間をかけてしまいますが、周りの薬剤師のサポートもあり、患者さまの悩みも解決できたので結果的に良いエピソードとして終わりました。

現実はこのようにうまくはいかないでしょうが、患者様一人一人にもっと時間をかけられる余裕が病院薬剤師にあれば、薬剤師の働く意欲向上にも、患者さまからの信頼関係の構築にもつながるのになと葵さんの薬局を少しうらやましく思いました。

患者さまやそのご家族から直接悩みを聞き、問題解決に導くことができたところ

葵さんは患者さまや患者さまのご家族から薬剤師として直接話を聞き、それがきっかけで患者さまの抱えている問題を解決するという場面がでてきます。

画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

「医師や看護師でなく、薬剤師にだからこそ話せる」と私も患者さまから何度か言われたことがありますが、こういうことがあると「ああ薬剤師になってよかったな」って心から思えるんですよね。

私の場合は糖尿病病棟で同じようなことがありました。

当時、糖尿病のため教育入院していた患者さまの話です。

薬もきちんとしているし、食事もカロリーをきちんと計算された病院食しか摂っていない。
おやつも食べていないと言うのに、なぜか血糖値やヘモグロビンA1c値が全く下がらないのです。

周りの医療スタッフもどうしようかと悩んでいたある日、服薬指導の依頼書が出ていたので、私は患者さまのベッドサイドに行き、薬の飲み方についてや低血糖の話をしました。

すると、患者さまが次のようなことを話してくれたのです。

 
 
 
 

ああ、低血糖昏睡ね。これ、前に聞いたことあるわよ。『死につながる副作用』なんでしょ?怖いわね。だから薬飲んだ後低血糖にならないようにすぐにもらったブドウ糖を飲んでるのよ。

そうです。血糖値の下がらない理由は、血糖降下剤服用後に患者様自身がブドウ糖を大量に服用していたからでした。

 
 
 
 

糖尿病昏睡は、死につながる副作用ではありません。万が一、決められた量の薬を服用した後、糖尿病昏睡になって倒れてしまい、誰にも助けてもらえず時間が経ってしまったとしますよね。
そのようなことが起こっても薬の効果が切れた後、血糖値はまた上がってきて起きられますから死につながる可能性はゼロに近いんですよ。大量に薬を服用しなければ、大丈夫です。
それよりも低血糖が起こるということは血糖コントロールが良くなっている証拠でもありますから、良いことなんですよ。
低血糖を恐れないで、低血糖時には自分にどんな症状が起こるのか観察してみてください。

そう伝えたところ、患者さまは納得してくださり、その後みるみるうちに血糖コントロールも良くなりました。

問題が解決した後の患者さまの感謝の言葉や笑顔を見た時はいつも、私たち薬剤師は葵さんと同じように幸せな気分になれますよね。

この漫画を読んでちょっと違うなと思ったところ

患者様一人一人に時間をかけられることはまずない

どのエピソードでも葵さんや先輩薬剤師の瀬野さんは、一人の患者さまにかなりの時間を割いているなとみられる場面があります。


画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

漫画を興味深いものにするために仕方がないことなのかもしれませんが、実際にはこのような時間は病院薬剤師にはないと思ってください。

院内の仕事は走り回らなければいけないほど忙しく、持ち場やタイムスケジュールも細かく決められているのが普通です。ちょっと持ち場を離れて患者さまに指導に行くと言ったことはできないに等しいです。

服薬指導の時間というのもありますが、その時間内にかなりの人数の患者さまを指導しなければいけないですし、指導が終わるとそれぞれの報告書を作成し、請求申請もしなければいけません。

もし葵さんのような時間の使い方をしていたら、指導依頼が出ている患者さま全員に指導をすることは不可能ではないかと思われます。

葵さんのように患者さまに手厚い指導をしたいと思っている薬剤師は大勢いますし、それが理想的なのですが、病院薬剤師は時間に追われて走り回っているというのが現実です。

先輩薬剤師とかなり仲がいい

葵さんは先輩の瀬野さんとかなり仲が良く、自分の意見をぶつけたり、時には先輩薬剤師に仕事を頼んだりしています。

画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

これは先輩薬剤師のキャラクターや病院の規模によるのかもしれませんが、私が勤めた病院では上下関係というものが結構厳しく、新人薬剤師が先輩薬剤師と和気あいあいと意見を言い合える雰囲気はありませんでした。

アットホームな雰囲気のある薬剤部ですと、このようなこともあるのかもしれませんね。

薬剤師が救急の薬を選択して病棟に持っていく

漫画の中では救急の患者さまの処置のため、薬剤師が薬を選択して持っていったり、患者さまの症状から薬を判断して医師に伝えるといったことをしていますが、私はこういった場面を経験したことはありません。

そもそも救急に必要な薬は常に救急カートの中にセットしてあります。その場で薬剤師が何が必要か判断することは求められませんし、薬剤師が薬を判断して医師に伝えられる機会もありませんでした。

ただ、今は専門薬剤師という資格が注目されていて、患者さまの状態を判断して医師に薬を提案するなど薬のエキスパートとしての活躍が期待されてきています。今後、瀬野先輩や葵さんのような仕事が増えていく可能性はあると思いますよ。

この漫画を通じて感じた、病院薬剤師の魅力とは

病院の薬局にこもって薬をひたすら作っているだけではなく、患者さまと関わり、薬剤師の知識や経験を活かして貢献していく病院薬剤師の描写がとても魅力的に感じました。

先ほどお話ししたように、薬剤師が患者さまの異変に気付いたりすることも実際に多く、患者さまは医師や看護師に言えないことを薬剤師にだからと話してくださったりするので、そこから解決策が見つかることもあります。

また、子供に苦い薬を飲ませる方法を伝えて患者さまに喜んでいただくというのも薬剤師ならではの出来事と言えるのではないでしょうか。

患者さまにお役に立てた時の葵さんの笑顔は、現場の薬剤師の笑顔そのものです。

その瞬間、多くの薬剤師が病院薬剤師の仕事へのやりがいを感じるのだと思います。

この漫画のキャッチコピーについて


画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

「医師のように頼られず、看護師のように親しまれない。
それでも彼女たちはあなたを支えている。
陰日向に咲く“医療”の物語。」
これがこの物語のキャッチコピーです。

目立たないところで患者さまの命を守るために必死に働いている、今の病院薬剤師の状態をそのまま表現していると思いませんか。

ただ現在、薬剤師も病棟に顔を出す機会が多くなったおかげで、担当の患者さまからは看護師よりも親しまれることが多かったことも事実です。

ベッドサイドに座って話ができるせいか、患者さまにとってカウンセラーのような役割を果たし、担当患者さまに信頼されることもありました。「先生、明日も来てくれるの!?」と言われたり、病院内で会うと手を振ってくれたりする患者さまもたくさんいらっしゃいました。

医師と肩を並べて仕事をしている海外の薬剤師と比べると、日本の薬剤師はまだまだ日陰で活躍している部分はあると思います。今後、薬剤師の専門性も他の医療スタッフや患者さまにもっと認められ、医師のように頼られ、看護師のように親しまれる薬剤師が増えることを願いたいです。

病院薬剤師の悩み


画像引用元:コミックゼノン アンサングシンデレラ第一巻

葵さんが薬剤師の地位が低いと悩んでいるときに瀬野先輩から「自分で自分の立ち位置決めちまったら、そっから進めなくなるぞ?」と言われています。

そうですよね。自分の立場が低いと決めつけてしまうと改善することができなくなる。

多分、それが正論なのでしょう。

ですが、実際に周りの職種からの評価が低いと、立ち位置を改善することも難しくなる他、薬剤師の本来の力を発揮する機会すらなくなることもまた事実です。

医療機関によるのでしょうが、私の勤めた医療機関の中には薬剤師の地位が驚くほど低いところが何件もあり、せっかく勉強したことも生かせないという苦い経験を私も随分してきました。

6年間死に物狂いで勉強し、それぞれの理想を持ちながら医療の世界に入ってきた新人薬剤師ならなおさら、薬剤師の地位の低さに失望してしまうに違いありません。

悲しいことですが、もともと薬剤師会自体が、医師会・看護師会よりも弱く、それが現場の薬剤師の立場の弱さにつながっているという声もあります。

たしかに自分の立ち位置を自分で決めてしまうことは良くないことかもしれませんが、まずは現実を受け止めて、そこから自分たちがどう改善していけばいいのか考えることが大切なのではないでしょうか。

元病院薬剤師として、この漫画に対してのメッセージ

今までドラマや漫画などで描かれることがほとんどなかった私たち病院薬剤師の仕事に、脚光を浴びせてくれたことに対してとても感動しました。

病院薬剤師たちは患者さまに貢献するために毎日必死になって働いていますが、そのことを知らないがために薬剤師の必要性を感じてくださらない患者さまも多いです。残念ながら。
「医師に話したからいい。君たちに話す必要はない!」と言われてしまうことも実際にあります。

この漫画を沢山の人に読んでいただき、私たちの仕事をより知ってもらうことができれば、患者さまからの信頼獲得につながって、患者さまにもっと薬剤師を活用してもらうことができるのではないかと思っています。

まとめ

今回は、病院薬剤師の視点から『アンサングシンデレラ』についての個人的な感想を書いてみました。

病院薬剤師なら、「これ、分かる!」というところや、「これはちょっと現実にはないかも」というところまで楽しめる漫画なのではないかと思います。薬剤師としての理想を追求していく主人公の葵さんの姿を見て、忘れかけていた情熱を思い出す人もきっと多いでしょう。

また、薬剤師ではない人にとっても、薬剤師の仕事を知ってもらう良い機会になるのではないでしょうか。

私たち病院薬剤師は医師や看護師よりも目立たない存在なのかもしれませんが、実は患者さまの命の安全を守るとても重要な役割を担っていて、病院薬剤師たちはそれを誇りに一生懸命働いています。

『アンサングシンデレラ』は、主人公の葵さんの目を通して、病院薬剤師の重要性や誇りがとても興味深く描かれています。ぜひ一度読んでみてほしいです。

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Candie

総合病院に臨床薬剤師として勤務後、治験コーディネーターを経て語学留学のため渡米。 帰国後は治験コーディネーター、保険薬剤師として英語を生かした仕事に就く。 現在は結婚退職し、ライターとシステムプログラマーとして在宅勤務中。趣味はものづくり。

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