今後の薬剤師

【2019年度版】第104回薬剤師国家試験の傾向からみる、国が求める薬剤師像

 

2019年3月25日に、第104回薬剤師国家試験の合格発表がおこなわれました。
合格率は70.91%(新卒は85.5%)であり、前年度とほぼ同水準の合格率ということです。
受験者数1万4376人に対して合格者数は1万194人と、合格者数が1万人を超えたことも話題をよびました。
この記事では、第104回薬剤師国家試験の内容から、国が今後どの様な薬剤師を求めているのかを考察していきます。

出典:厚生労働省 第104回薬剤師国家試験問題及び解答

第104回薬剤師国家試験の傾向

薬剤師国家試験予備校の薬学ゼミナールは、今回の試験を「科目により差はあるが、全体としての難易度は中等~やや難であった。」と総評しています。

また、「103回と比較するとやや易しい問題が多かった。」とも評しており、近年続く高難易度の国家試験の中でも、昨年よりはやや易しい問題であったということです。

近年増加している実際の症例に基づいた問題は継続して出題されており、問題解決能力が問われる傾向にあります。
医薬品の知識だけでなく、実践的な能力が求められるようになっているのです。

ここでは、例題を一つ見てみましょう。

問288−289
15歳女性。下痢、腹痛が続くため2ヶ月前に病院を受診し、検査した結果、潰瘍性大腸炎と診断された。現在は以下の処方で治療されている。
なお、母親 はB型肝炎のキャリアである。
(処方1)
メサラジン腸溶錠400mg 1回6錠(1日6錠) 1日1回 朝食後 7日分
(処方2)
酪酸菌(宮入菌)錠 1回1錠(1日3錠) 1日3回 朝昼夕食後 7日分

問288(病態・薬物治療)
この患者の病態の説明として正しいのはどれか。1つ選べ。

  • 組織生検では、小腸にも異常が認められる。
  • 便培養検査で原因菌が特定される。
  • 体重が増加する。
  • 血液検査では、炎症反応は陰性である。
  • 症状は再燃と寛解を繰り返す。

問289(実務)
その後、症状が増悪したため、入院してインフリキシマブ(遺伝子組換え)点滴 静注用を1回投与量として体重1kg当たり5mg投与することになり、予め治療チームで話合いをすることになった。薬剤師が他職種に提供する情報として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  • 治療中はインフルエンザワクチンの接種を避けること。
  • 治療中は麻疹ワクチンの接種を避けること。
  • 胸部レントゲン検査を行い結核感染の有無を確認すること。
  • 間質性腎炎の検査を定期的に実施すること。
  • 肝機能に異常がなければ、B型肝炎ウイルス検査は不要であること

第104回薬剤師国家試験より抜粋)

こちらは、潰瘍性大腸炎の患者さまを想定した設問ですね。
アサコール(もしくはそのジェネリック医薬品)とミヤBMで加療中に、増悪をきたしてレミケードを使用するという症例です。
最近新たに追加されたアサコールの1日1回の用法に目が行きますが、設問には関係がないようです(笑)

このように、症例をもとにした問題において、周辺知識まで問われることが最近の傾向です。
医薬品の知識だけでなく、病態や実務的な部分にも目を向けた勉強をしなくてはなりません。

ちなみに、上記の設問の答えは問288が「5」、問289で「2」と「3」です。

第104回薬剤師国家試験、前年までとの違い

第104回薬剤師国家試験では、最近の傾向にある科目の壁を超えた連問など、「総合的な力」や「考える力」を必要とする問題が継続して出題されました。

実務実習で体験して欲しい「代表的な8疾患」の問題が、第103回より多く出題されたことがポイントです。

※「代表的な8疾患」とは、がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症のことをあらわします。

幅広いフィールドにおいて薬剤師が職能を発揮することに期待を込めた問題も、数多く出題されていました。

豪雨災害での避難所における薬剤師の対応(問335)や、病院のお薬相談コーナーで麻疹ワクチンについての対応(問218~219)、小学校で大麻についての説明会をおこなう学校薬剤師の対応(問238~239)など、さまざまなフィールドで薬剤師が力を発揮していくことが期待されています。

ここでは上記の中から、豪雨災害での避難所における薬剤師の対応の問題をご紹介します。

問335
豪雨災害を受けた地域の避難所に薬剤師が医療チームの一員として派遣された。食中毒が懸念されており、手の消毒を推奨することになった。この避難所には下記の消毒剤が用意されていたが、希釈するための上水が不足していた。希釈をしないで使用できる消毒剤はどれか。2つ選べ。

  • ベンゼトニウム塩化物液(0.2w/v%)
  • クレゾール石ケン液(50vol%)
  • ベンザルコニウム塩化物液(0.05w/v%)
  • 消毒用エタノール(80vol%)
  • クロルヘキシジングルコン酸塩液(5w/v%)

第104回薬剤師国家試験より抜粋)

これまでは金属や手指の消毒に用いることができない消毒薬を選択する問題が度々出題されていましたが、今回は災害時の上水不足を想定した、希釈せずに使用できる消毒薬を選択する問題でした。
こちらの設問の答えは「3」と「4」ですね。

そのほかにも、生物の知識からアプローチする新傾向の問題が出題されたことも、ポイントの一つです。

問318−319 
30歳女性。甲状腺機能亢進症に対し、チアマゾールで外来治療中に、無顆粒球症が発生し死亡に至った。なお、併用薬はない。

問318(法規・制度・倫理)

問319(実務)
本剤の添付文書には下記のような記述がある。無顆粒球症の副作用の発見のためには、白血球分画のうち、どの細胞の数を調べればよいか。1つ選べ。

【警告】

  1. 重篤な無顆粒球症が主に投与開始後2ヶ月以内に発現し、死亡に至った症例も報告されている。少なくとも投与開始後2ヶ月間は、原則として2週に1回、それ以降も定期的に白血球分画を含めた血液検査を実施し、顆粒球の減少傾向等の異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、一度投与を中止して投与を再開する場合にも同様に注意すること(「重大な副作用」の項参照)。
  • リンパ球
  • 単球
  • 好酸球
  • 好中球
  • 好塩基球

第104回薬剤師国家試験より抜粋)

なお、こちらの設問の答えは「4」の好中球です。

第104回薬剤師国家試験から導入された禁忌肢とは?どの問題が該当する?

第101回から、相対基準が導⼊されて話題を呼びましたが、今回の104回からは「禁忌肢」が導入されました。
厚生労働省の「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」によると、禁忌肢は下記のように説明されています。

薬剤師には、医療人としての高い倫理観と使命感が求められることにかんがみ、薬剤師として選択すべきでない選択肢(いわゆる「禁忌肢」)を含む問題について、導入することとする。

禁忌肢の導入にあたっては、公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容、倫理的に誤った内容、患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容、法律に抵触する内容等、誤った知識を持った受験者を識別するという観点から作問することとする。
薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針より抜粋)

現在のところ、どの問題が禁忌肢かは明らかにされていませんが、筆者が見た中で禁忌肢に該当しそうな問題をご紹介します。

問310−311  
58歳男性。肺がん、ステージⅣ。強い疼痛を訴えていたため、アセトアミ ノフェン錠とフェンタニル経皮吸収型貼付剤が投与されていた。患者の希望で緩和ケア病棟に1週間前に入院となった。腎機能は、直近のデータでCcr20mL/min である。入院後、疼痛コントロールが不良になったため、フェンタニル経皮吸収型貼付剤の増量が行われたが、痛みに対する効果が改善されなかった。

問310 (実務)

問311(法規・制度・倫理)
薬剤師が病室を出ようとしたところ、患者が「もう早く死んでしまいたい。家族にも迷惑をかけるし、何とかしてください。」と涙ながらに訴えた。薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。

  • 「そんなことを言わずに頑張ってください!」と激励する。
  • 言われたことは誰にも伝えず、自分の心の中にしまっておく。
  • 患者の訴えを医療スタッフと共有する。
  • 突然の訴えに驚き、病室から立ち去る。
  • 患者の話を共感しながら傾聴する。

第104回薬剤師国家試験より抜粋)

この中で、「2」の選択肢などは、倫理的に誤った内容や患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容に該当するため、禁忌肢である可能性がありそうですね。

もっとも、このような選択肢を選ぶことは通常は想定しにくいので、禁忌肢が合否を分けるということは多くなさそうです。

こちらのニュースでも、『「禁忌肢」が初めて導入され、10問程度あったと見られるが、複数問を選択している受験者はほとんどおらず、影響は限定的のようだ。』とされていますね。
QLifePro医療ニュースより

ちなみに、こちらの設問の答えは「3」と「5」です。

第104回薬剤師国家試験の傾向からみる国が求める薬剤師像

地域包括ケアシステムやかかりつけ薬剤師制度が取り入れられる中で、薬剤師に求められる役割は大きく変わりつつあります。

これまでのように調剤室で外来調剤をこなすだけでなく、薬剤師自ら外に出て活動をする時代を目の前にしているのです。
国家試験の問題からも、災害現場や学校など、さまざまなフィールドで活躍してほしいという出題者の意図が読み取れますね。

今後求められるのは、「総合的な力」や「考える力」を持ち、あらゆる現場で医薬品の専門家として力を発揮することのできる薬剤師です。

医薬品の知識を身に着けることも重要ですが、患者さまとのコミュニケーションや提案力など、「医療現場での実践力」を持った、実臨床で生きる薬剤師を目指すべきでしょう。

まとめ

  • 第104回薬剤師国家試験の合格率は70.91%(新卒は85.5%)で前年並み
  • 引き続き「総合的な力」や「考える力」が求められている
  • 医薬品の知識だけでなく、実臨床で生きる薬剤師を目指そう

第104回薬剤師国家試験の変更点やポイントについて、実際の問題をみながら解説をしていきました。
薬剤師の認定をおこなう薬剤師国家試験には、「国が求める薬剤師像」が大きく反映されています。
この記事を参考にして、自身の薬剤師としてのキャリアを見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

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ヤス

ヤス

製薬会社MR→ドラッグストア→調剤薬局と2度の転職を経験。 現在は都内の中規模調剤チェーンで管理薬剤師をしています。調剤業務だけでなく、地域活動や講演活動にも奮闘中。得意な科目は小児科と精神科、婦人科など。趣味はドライブとスノーボード。

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